研究内容
私たち「食品発酵学研究室」では、アルコール発酵を利用する醸造や物質生産に用いられる微生物である酵母(いわゆるパン酵母である出芽酵母)(右写真)を実験材料にして、細胞のストレス応答機構や代謝制御機構に興味を持って研究を行っています。
微生物による有用物質生産のプロセスでは、時として過酷な環境条件下に微生物は曝されます。そこで、酵母をモデル生物とした解析を通して、微生物細胞が様々な環境変化や環境ストレスを感知して適応するメカニズムの理解を目指しています。また、酵母を利用する醸造に必須な酵母の代謝経路であるアルコール発酵経路に着目し、環境変化や環境ストレスがアルコール発酵経路に及ぼす影響について、酵母遺伝学を中心とした研究手法を用いて解析を行っており、醸造をはじめとする酵母を用いた物質生産に資する知見の獲得を試みています。

環境変化に対する細胞膜・細胞壁における感知機構
細胞の内外を隔てる細胞膜は、細胞と周囲の環境とが接する最前線であり、環境の変化や物理的な刺激によってダイナミックにその形状や組成を変化させます。細胞はそのような細胞膜の状態変化を正確に感知することで環境変化に適応し、細胞の恒常性を維持しています。
細胞壁は、最外殻バリアーとしての役脇を持つ堅牢且つ静的なイメージの構造体ですが、一方で部分的な溶解と合成といったリモデリングを繰り返す動的な側面も持ち合わせています。
そのような細胞膜や細胞壁の状態を細胞はどのように『感知』しているのでしょうか?
細胞内シグナル伝達が関わる環境応答機構
作成中
アルコール発酵経路と環境応答との連関
酵母の代謝経路の一つであるアルコール発酵は、古くから醸造などに活用され、伝統的な技法により支えられる食品生産を通して私たちの食生活とも密接に関わっています。
私たちは、科学の視点から代謝経路としての『アルコール発酵』、さらには醸造過程を理解することを目的として、アルコール発酵経路の初発反応を触媒する酵素に着目し、発酵調節に関わる代謝統御システムの同定を試みています。また、アルコール発酵経路と酵母の環境応答機構との関連性に着目した解析を実施しています。